Note: This article is only for Japanese readers.
以下二つの発信内容について
- 「太陽・土星・冥王星が500年ぶりに合になる」という誤った情報
- 1月13日〜14日にあった山羊座での3天体合について、2700年ぶりのカジミという表現を用いましたが、間違っている可能性があります
1)太陽・土星・冥王星が500年ぶりの合
2020年1月14日は「山羊座において500年ぶりに3天体合がおきる」が内容として正しいです。しかし、一連のツイートで「山羊座」という点に言及していない箇所があり、一部の方に誤った情報として伝わりました。本件はツイッター・フォロワーさんとのやりとりが発端[*1]でしたが、前提となる条件を述べずに発言したことが原因です。ごめんなさい。
2)BCE689年に冥王星カジミは起きていない可能性がある
カジミの詳細、また占星術的な見解の詳細はこちらをご覧下さい。
【経緯】
2020年1月14日に3天体の合が山羊座で起き、これが占星術用語でいうカジミにあたることが分かりました。過去に遡ったところ、山羊座で起きる同様の現象は紀元前699年(-688年)であることが判明します。そこから「2700年ぶりに起きる」と述べたのですが、再検証後「起きていない」可能性が浮上しました。
【2020年1月14日】
まず最初に参照した2020年1月14日のチャートです。3天体が黄経17分内にあり、カジミの条件を満たしています。また、天文シミュレーションにおいても同様です。またこの日、実際にこうした現象がありました。
【紀元前689年1月4日】
問題となる紀元前689年(天文学での表記は-688年)のチャートです。
3天体は山羊座7°18’〜21’にあり、カジミの条件を満たしています。しかし、別のデータを照合すると冥王星は太陽から15度も離れていることが分かりました。この差は各天体ともに、現在から過去に遡るほど大きくなります。
冥王星の軌道は特に乖離し、西暦1500年程度までが正確性を担保できる限界なのでしょうか。NASAが公開する天体軌道算出アルゴリズム(HORIZONS system)では、冥王星の位置情報提供の限界日を1549年12月21日としています。
以下の表は各データの冥王星位置情報です。1517年・1285年のデータに2度の違いが表れ、782年にはその差は5度にまで広がります。
過去2700年におきた山羊座でのコンジャンクション
時期 | 時刻 | The Sun | Saturn | Pluto (data1) | Pluto (data2) |
---|---|---|---|---|---|
BC689.01.04 | 21:40 | ♑︎ 7°18’ | ♑︎ 7°18’ | ♑︎ 7°21’ | ♑︎ 22°05’ |
0048.01.04 | 13:54 | ♑︎ 12°11’ | ♑︎ 12°11’ | ♑︎ 9°54’ | ♑︎ 19°32’ |
0549.01.10 | 14:39 | ♑︎ 22°42’ | ♑︎ 22°42’ | ♑︎ 26°50’ | ♒︎ 2°46’ |
0782.12.24 | 11:22 | ♑︎ 6°26’ | ♑︎ 6°26’ | ♑︎ 8°07’ | ♑︎ 13°38’ |
1285.01.11 | 12:36 | ♑︎ 28°57’ | ♑︎ 28°57’ | ♑︎ 27°03’ | ♑︎ 29°38’ |
1517.12.14 | 13:37 | ♑︎ 1°55’ | ♑︎ 1°55’ | ♑︎ 3°35’ | ♑︎ 5°35’ |
2020.01.04 | 0:15 | ♑︎ 22°53’ | ♑︎ 22°53’ | ♑︎ 22°48’ | ♑︎ 22°49’ |
検証に用いたアプリケーション
(data1) Astro Gold, Astrolog (Swiss Ephemeris系)
(data2) Placidus, Stellarium
天文暦の精度について、どちらが正しいかに言及することが出来ないため、現時点では判明した内容を述べるに留めます。また今後こうした情報を公開する際には補足情報を明示します。
紀元前689年の合がカジミでない場合、ここ2700年で起きた(全サインでの)3天体コンジャンクションでカジミとなるのは、今回の合が初めてかもしれません。少なくとも、上記アプリケーション群で、過去の3天体合(太陽・土星・冥王星)カジミについて一致した結果を見ることはできませんでした。
[追記]
過去の天体配置調査を行う場合でも、これまではSwiss Ephemerisを使えば良いと考えていました。しかし、Rumen Kolev先生は惑星位置計算アルゴリズムの選定に相当の時間を割いたと仰っていましたから、ここまでの差違があると素直にSwiss Ephemerisに従って良いのか疑問を抱かざるを得ません。惑星の「三体問題(多体問題)」は非常に複雑で、完璧に正確なシミュレーションを行うのはほぼ不可能と聞きます。ターム、ドデカテモリアなど、1度変われば意味が変わる度数を扱う占星術にとって、過去の検証はどのアルゴリズムを指標とすべきか調査を続けます。
参照
Swiss Ephemeris [Astrodienst]
https://www.astro.com/swisseph/swephinfo_e.htm
HORIZONS system [NASA]
https://ssd.jpl.nasa.gov/?horizons
Keplerian Elements for Approximate Positions of the Major Planets [NASA]
https://ssd.jpl.nasa.gov/?planet_pos
註釈
*1 本件の元ツイート[2019-11-17]
昨晩から妙にひっかかるものがあり、過去6回分 3天体の♑︎会合を溯ってみました
・2天体カジミは2700年前(689BC)
・1月14日 土星は太陽視直径内(真反対)なにかが気になりますね pic.twitter.com/JotmhQC6m4
— astrogrammar (@astrogrammar) November 17, 2019